小選挙区比例代表連用制の評判が悪くて悲しい論

ここでは、最近公明党が導入を主張してる小選挙区比例代表連用制ってそんなに悪くないよって事を言うためのエントリなわけですが。
 そもそも日本における選挙制度の議論には、頭おかしい視点が多い。小選挙区で負けて、民意から否定された候補が比例で復活するのはおかしいってのはその最たるもので、比例での復活は死票の救済という重要な役割があるのに。つーか死票についてどう思ってるんだろうねこういう人達。議会選挙は大統領選挙とかとはぜんぜん違う理屈で動くものなのに、発想が貧困なんだよなぁ。

追記履歴

01/20 12:30 灰色部分追記
01/20 18:30 現在エントリ書いたの後悔中。
内容の突っ込みどころが気になって、でも今更書き換えるのもなぁ状態。

死票とは何か。

 AさんとBさんが立候補して、以下のように票を得たとします。

Aさん 7票
Bさん 3票

 小選挙区制の場合、Aさんが当選するわけだけど、この際、Bさんに投票された3票と、Aさんに投票された票のうち、当選に必要な4票を除いた3票の、計6票は投票してもしなくても結果が変わらない。これを死票と言います。
 (一般的には、投票した候補が国会に参加できないという定義から、Bさんに投票した3票のみを死票と呼びますが、ここではAさんへの3票を含めた6票を、投票してもしなくても結果が変わらないという定義を以って死票と呼ぶことにしてます。前者の定義だと、圧勝で勝ち確定な情勢では死票は殆ど無いってことになるけれど、その状況で投票する意味を感じるかというと疑問なので。もしかして後者の意味には別の単語があるのかしら…)
小選挙区制の場合、この死票が必ず半分を超えます。投票の半分が必ず無駄になるってことね。
 この無駄になった票の一部を再利用して、議席を配分しようっていうのが比例復活です*1。票の価値は下がるけど、全く反映されない死票よりは遥かにマシだよねってことです。

死票を減らすべき理由

 単純だよね。自分の票が無駄になる可能性が高い選挙に投票する気なんて起きにくいって話です。投票率を上げることが正しいなら、なるべく票が無駄にならない、死票が少ない制度を採用すべきなんです。

死票が一番少ないのは比例代表制だけど

 比例代表制への批判で多いのが「小党が乱立し、連立しないと過半数を確保できなくなり、政党間の駆け引きが激しくなって政治が混乱する」というので、至極もっともです。だから、単純な比例代表制を導入するってのも安直なんだよね*2。ある程度、大政党に配慮する必要がある。しかし、死票はなるべく少なくしたい。そこで、大政党に優しい小選挙区と、死票が少ない比例代表制を組み合わせるという発想になる。

連用制は、単純な比例代表制と比べたら小政党に厳しい

 さて、小選挙区比例代表連用制はどういう制度なのかですが、今使われてる並立制に近い制度です。ただ、具体的な計算方法は後述しますが、比例議席の配分を、小選挙区議席を取れなかった政党に優先して行うという操作を行います。これを以って「連用制は民意をゆがめる制度」なんて言い方をする人もいますけど、違いますって。
 連用制は単純な比例代表制よりは小政党に厳しいです。毎日新聞がやった、09年衆院選を80削減+連用制と仮定した試算だと、共産党は18議席だそうですが、これを80削減+全部比例でやったとすると、共産党は30議席近く取ります。ほぼ全部の票を平等に反映させる比例代表よりは、まだ小政党には厳しい制度なんです。連用制ってのは。

ちなみに中選挙区制は最悪です

 なんで未だに中選挙区制の導入を主張する化石みたいな人がいるんだろうね。まだ、都道府県単位で比例代表やったほうがまともな結果になると思うよ。

小選挙区比例代表連用制の仕組み

 小選挙区議席300、比例議席100という設定にします。
 A党、B党、C党、D党の4党が、全国で40%、30%、20%、10%の得票を得て、さらに各小選挙区ではA党が200議席、B党が100議席を得たとします。

政党 得票 小選挙区 比例
A党 40% 200議席 0議席
B党 30% 100議席 0議席
C党 20% 0議席 0議席
D党 10% 0議席 0議席

で、ここから比例議席を配分するわけです。
まず、得票率を、すでに配分した議席数+1で割ります(ドント式の場合)ここで、小選挙区で得た議席も含めちゃうのが、並立制と連用制の最大の、と言うかほぼ唯一の違いです。

政党 得票 小選挙区 比例
A党 0.199% 200議席 0議席
B党 0.297% 100議席 0議席
C党 20% 0議席 0議席
D党 10% 0議席 0議席

この状態で、得票率が一番高い政党に議席を配分します。

政党 得票 小選挙区 比例
A党 0.199% 200議席 0議席
B党 0.297% 100議席 0議席
C党 10% 0議席 1議席
D党 10% 0議席 0議席

C党の議席が増えたので、得票率もきちんと割り算しておきました。で、これを、比例の議席の合計が100になるまで繰り返します

政党 得票 小選挙区 比例
A党 0.199% 200議席 0議席
B党 0.297% 100議席 0議席
C党 0.294% 0議席 67議席
D党 0.294% 0議席 33議席

 比例の議席が、小選挙区議席が少なかった政党に優先して配分されてることがわかります。
 他の選挙制度との比較はこちら

政党 並立制 連用制 全比例
A党 240議席 200議席 160議席
B党 130議席 100議席 120議席
C党 20議席 67議席 80議席
D党 10議席 33議席 40議席

 小政党が、現行の並立制よりは多く、でも比例代表制よりは少なくなる感じがわかると思います。

*1:でもそのためには、小選挙区の票と比例の票は同一にしなきゃいけないわけで、小選挙区と比例の票が分かれてて、それぞれを別の党に投票できる現行制度の欠陥は修正すべきだと思う

*2:時々、もし比例代表で政局が混乱したら、混乱こそが民意であるみたいなむちゃくちゃなこと言う人がいるから困る